大阪大学大学院連合小児発達学研究科、同大学付属病院発達外来などで、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症等の発達障がいについて、臨床医学に加え画像・疫学や生命科学を加えた医科学、社会心理学・教育支援学を背景に、発達障がいの特性をもつお子さまや成人、そのご家族の認知機能の研究をしてきました。当相談室では、自己理解としての心理療法をはじめ、知能検査(WAIS/WISC)やその他の心理検査を行うことができます。来室される方と一緒に、ご自身の内面や行動・思考パターンを見つめなおし、自分らしさを見つける生き方を考えています。
【自閉症スペクトラム症(発達障がい)とは…】
発達障がい的な要素は、実はすべての人が多かれ少なかれ備えていると捉えることができます。主に先天性の脳機能障害が原因となり、精神面、運動面の発達に問題があり、日常生活に支障をきたしていたり、社会適応に向け支援が必要な場合に、「発達障がい」があるといわれます。しかし、症状はさまざまであり人によって異なります。一般的に、コミュニケーション・対人関係・社会性・行動のパターンに偏りや困難を抱えている傾向があります。また、二次障害といって、上記の特性を持つがゆえ、周囲からの誤解や不適切な対応による、自信の喪失、不登校、ひきこもり、うつ状態などを抱えていることがあります。このような二次障害をはじめさまざまな生きづらさに対して、周囲の対応や環境の調整、理解者の存在が非常に大切となります。
【当相談室における自閉スペクトラム症(発達障がい)に関する相談は 、下記のような方を対象としております】
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お子様が自閉スペクトラム症(発達障がい)ではないかと感じておられる方
ペアレントトレーニングを中心に、知能検査結果をお持ちいただければ、具体的な関わり方などを相談していきます。当相談室においても、5歳以上のお子様から知能検査を行っております。知能検査ではWISC-Ⅴ(ウィスク:児童用:対象年齢5歳~16歳11ヶ月)を用います。この知能検査のみで発達障がいの傾向があると判断できるものではありませんが、同年齢集団の中での個人の知能水準の位置を知り得る知能偏差値IQが算出できます。全体的な知的能力や記憶、処理能力などを測定できるため、発達障がいの傾向や日常生活におけるサポートに活用されていることが特徴的です。お子様の得意・不得意の分野を明確に知ることも可能です。特に、ご本人が苦手としている点では、家庭や学校で支障を来す場合が多くみられます。そのトラブルの原因や対処法を知るために、知能検査は重要な手がかりとなると考えられています。お子様の得意な分野を活かして、力がより発揮できる環境を整え、少しでも負担の軽減に繋げられるよう考えていきます。
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自閉スペクトラム症(発達障がい)の傾向が見られる小学生以上の方で、言語的なやり取りが可能な方
相談者の認知に合わせた心理療法を行います。客観的な場面の理解を促したい場合はソーシャルスキルトレーニング(SST)や認知行動療法(CBT)を取り入れたり、いじめなどの二次障害が見られた場合はEMDRを取り入れたりします。EMDRは自閉スペクトラム症(発達障がい)の傾向がある児童期のお子様にとって有効性が高いと感じています。
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自閉スペクトラム症(発達障がい)の傾向がある方で、就労または対人関係に関して困難を抱えている方
相談者が何に困っているかを総合的に理解した上で、相談方針を決めていきます。進学後の新たな学生生活や就職後、これまでと異なった環境に適応しにくい方もおられます。ご自身のどういった特性が新しい環境でうまく適応できないのか、心理療法をはじめ、必要であれば、知能検査や心理検査を行って総合的な判断を行うことができます。知能検査ではWAIS-Ⅳ(ウェイス:成人用:対象年齢16歳~90歳11ヶ月)を用い、同年齢集団の中での個人の知能水準の位置を知り得る知能偏差値IQが算出できます。成人の方ににとっては、全体的な知的能力や記憶、処理能力などを測定し、得意・不得意の分野を明確に知ることで、今後の学生生活や社会生活の中などで、ご自身について客観的に考えたり、見つめ直す手助けになるものです。
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知能検査(WAIS・WISC)により強み・弱みを確認してみたい方
子どもから大人までを対象に、各種心理検査や知能検査(WISC/WAIS)を実施しています。児童用(5歳~)のWISC、成人用(16歳~)のWAISを用いて、同年齢集団の中での個人の知能水準の位置を知り得る知能偏差値IQが算出し、全般的な認知(知的)能力を知ることができます。全般的な認知能力では下記4つを測定します。それぞれの数値や傾向などが書かれた検査報告書を作成し、得意な能力を活かして苦手さをフォローするにはどうしたらよいか、より力を発揮できる環境設定のためには何が必要かなど、学校や職場での支援においての手立てを考えていきます。
- ①言語理解(言語による理解力・推理力・思考力に関する指標です。この力により言語によるコミュニケーションをとったり、そこから推論したりすることができると考えられています)
- ②知覚推理(視覚的な情報を把握し推理する力や、視覚的情報にあわせて手先を動かす力に関する指標です。新しい情報に対する解決能力や対応力にも影響すると考えられています)
- ③ワーキングメモリー(一時的に聞いた情報を記憶しながら、処理する能力に関する指標です。ワーキングメモリは口頭での指示理解や、読み書き算数といった学習能力、集中力に大きくかかわることが指摘されています)
- ④処理速度指標(視覚情報を処理するスピードに関する指標です。マイペースで切り替えが苦手である場合なども、この指標得点が低くなることがあります)
なお、自閉スペクトラム症(発達障がい)の診断、お子様に対する療育指導などは行っておりません。ご希望の場合、または必要と判断した場合、関係機関のご案内をさせていただきます。当相談室で行っていることは、知能検査(WISC/WAIS)や各種心理検査となります。